教育美術・佐武賞

教育美術・佐武賞について

 「教育美術・佐武賞」は、公益財団法人教育美術振興会(当時:財団法人教育美術振興会)の初代理事長として、長い年月ひたすら美術教育の振興に心をくだき、生涯をかけて大きな力を尽くされた佐武林蔵先生(昭和43 年没)のご寄付によって、昭和41(1966)年に設立されました。
 現場の先生方の実践に光をあてることにより、子供と共につくりあげた優れた授業を広め、指導者の育成と、図画工作・美術科教育の発展に貢献することが本賞の狙いです。そして現場の先生方が日々の実践の悩みから見出した課題や、新学習指導要領の中から見つけた課題などを解決するために、どのような実践をしているかを大事にしています。
 本賞が契機となって、学校現場における実践活動が活性化し、研究の輪が一層広がることを願っています。

第50回 教育美術・佐武賞

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〈題名〉
人とのつながりをつくりだす版画教育
~子ども同士のかかわりによる造形思考を生かした版画製作と
 版画教育を通して子どもと社会をつなぐ「地域連携」~

〈執筆者〉
上北図工部会(青森県上北地方小学校教育研究会図画工作科部会)

〈概要〉
 本研究部会は、青森県の上北地方小学校教育研究会の図画工作科部会である。今回の論文は、本研究部会が平成23・25・26年度に行った3年の研究をまとめたものである。
 研究のテーマは、「人とのつながりをつくりだす版画教育~子ども同士のかかわりによる造形思考を生かした版画製作と版画教育を通して子どもと社会をつなぐ『地域連携』~」である。
 具体的には、「1【学び合う】学習の過程で『周りの友だちの発言や様子』『製作の過程での友だちからの情報(良さや異なる自分の課題)』を取り出し、それらを作品に生かすことにより造形思考を高め、『思考力・判断力・表現力』を育てる段階」、「2【つながる】造形活動を通して、友だちや地域とつながることの大切さを体験し、『多様性を学び、協調性を育てる』段階」における教師の手立てと子どもの変容について実践研究を行った。平成23年度の実践では、版画学習と地域連携の在り方に、平成25年度の実践では少人数学級における版画指導の在り方に重点をおいた研究を行った。そして、平成26年度の実践では、学年107名という大人数にも関わらず、子どもたちは造形思考を高め合うかかわりの中で「ありがとうの版画」を題材に、意欲的に製作を進めることができ、さらに、地域の商店街の52店舗に作品を展示してもらい、大きな反響を得ることができた。
 以上の3つの実践研究を通して、指導の仕方によっては、子ども同士のかかわり合いの中から作品を作り出し、さらに、その作品によって子どもたちと地域とのつながりも作り出せることがわかった。そして、これからの版画指導の在り方は、過去の「共同版画」の伝統を踏まえつつ、未来を生きる子どもたちに必要な主体性、多様性を育てることを目標にした「協働版画」へと学び方を変えていくことが重要であると考えている。

※論文は下記よりダウンロードできます。

第50回 教育美術・佐武賞 佳作賞

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〈題名〉
学校から地域そして未来へ
―小学校・第6学年「つながろう~アートを通して広がる世界・広がる生き方~」の実践から―

〈執筆者〉
黒井 美智子 (くろい みちこ)
勤務先:新潟県 見附市立名木野小学校 教諭 (応募当時)
※前任校長岡市立上組小学校での実践

〈概要〉
 前任校の長岡市立上組小学校では、美術教育を中核に学校運営がなされている。特に、第6学年は「総合的な学習の時間」においても、年間を通じて「子ども学芸員活動」に取り組んでいる。
 子どもたちは第6学年までに、地域と連携した活動を多数経験してきている。また、表現及び鑑賞の活動に対して抵抗を見せる子どもは少ない。しかし、ともすると教師主導の活動になり、子どもたち自身が試行錯誤しながらも、活動を進めようとする態度に弱さが見られた。そのため、これまでの経験を生かしながら自信をもって、主体的に関わる態度を育てたいと考えた。
 また、準備に追われ、第6学年の取組の詳細が他学年に伝わりにくい、「総合的な学習の時間」の総時数が70時間に削減された、校内に図工専科の職員がいないといった前年度までの課題もあった。今後、誰が担当しても活動を継続していくことができるように、モデルケースとなる年間活動計画のスリム化を心掛けた。
 具体的には、同一作品を場所を変えて複数回展示した。また、図画工作はもちろんのこと、国語、さらには学校行事との関連を図ることで、時数を確保した。何より、保護者、地域の方々と連携を図ることで、活動をスムーズに進めることができた。そして、活動を進める中で、子どもたちからも「地域」と「未来」という二つのテーマが浮かび上がり、一つ一つの活動を結び付けていった。
 活動の三つの柱である校内美術館「こだま美術館」での企画展、地域での企画展、新潟県立近代美術館での鑑賞活動、それぞれで繰り返し子ども学芸員活動を行う中で、子どもたちは主体的に活動を進め、関わる態度を身に付けることができた。

※論文は下記よりダウンロードできます。

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